
【検証】配当落で下落した株価は回復する?
目次
はじめに
前回の記事では、配当の権利落ち日に株価がどの程度下がるかを調査しました。そこで確認できたのは「予想される配当金とほぼ同額だけ株価が下落する」傾向です。
では、配当落ちで下落した株価はその後回復するのでしょうか?
本稿では 2024年3月の東証プライム銘柄 を対象に、権利落ち日の下落率をもとに3つのグループに分け、以降1年間の株価推移を比較検証します。
データ概要
対象日
- 権利付最終日:2024‑03‑27
- 権利落日 :2024‑03‑28
対象銘柄
- 2024‑03‑27時点の東証プライム上場1,617銘柄
- ※上場廃止銘柄等は除外。生存者バイアスの可能性あり。
- 配当実施の有無は問わず、全銘柄を集計。
下落率の定義
- \(\text{下落率} = \frac{\text{3/27終値} - \text{3/28終値}}{\text{3/27終値}}\)
- 下落した場合に正の値となるよう計算。
- この計算には、配当落ち以外の要因による株価の変化も含まれる点に留意。
グループ分け
- 権利落前後の下落率の大小で3等分(各539銘柄)
パフォーマンス測定
- 株のパフォーマンスは配当を考慮せず、値動きだけで測定。
- 株式分割・併合は考慮。
結果
配当落ち前後の下落率の分布
まず、全銘柄の配当落値前後の下落率分布を確認しました。
- 平均:1.9%
- 標準偏差:2.1%
続いて、下落率の大小を基に3グループに分類したところ、各グループの基準は以下のとおりになりました。
グループ | 下落率の範囲 | 銘柄数 |
---|---|---|
下落率 大 | 2.72%以上 | 539 |
下落率 中 | 1.16%以上 2.72%未満 | 539 |
下落率 小 | < 1.16% | 539 |
各グループの1年間のパフォーマンス比較
各グループに均等投資した場合の株価パフォーマンスを、配当金を考慮せず価格変動のみで追跡しました。
初期値(3/28終値)を1.00として、3ヶ月ごとの推移をまとめました。
日付 | 下落率下位 | 下落率中位 | 下落率上位 |
---|---|---|---|
2024‑03‑27 | 1.00 | 1.02 | 1.04 |
2024‑03‑28 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
2024‑06‑30 | 1.02 | 1.02 | 1.04 |
2024‑09‑30 | 0.96 | 0.98 | 0.99 |
2024‑12‑31 | 0.98 | 1.01 | 1.03 |
2025‑03‑31 | 0.95 | 0.99 | 1.02 |
配当落ち時に大きく下落したグループほど、その後のリカバリーが早く、結果として1年後の株価パフォーマンスが最も高い傾向が見られました。
差分の推移
「下落率大」グループと「下落率小」グループの株価差(スプレッド)推移を描画すると、以下のように右肩上がりで開いていきます。
- 初期のスプレッドは約4.2ポイント
- 約8ヶ月弱で差が解消され、その後さらに拡大
なお本集計では配当を除外していますが、前回の記事で示した通り、配当落ちによる下落が大きいほど配当金も大きいと予想されます。配当込みシミュレーションなら、より早期にリカバリーした可能性もあるでしょう。2024年は高配当株が強かった年とも言えそうです。
まとめ
- 権利落ちで大きく下がった銘柄ほど、その後1年間の株価パフォーマンスが相対的に良好
- ただし、サンプルは2024年3月のみの1事例。統計的検証は不十分であり、配当利回りだけで安易に判断しないことを推奨
今後の調査事項
本記事の集計は簡易的なものです。実際の判断には、以下に示すような追加の調査が必要だと考えられます。
- 統計的有意性の検証。
- 他年度での再現性確認。
- バリュー等他のファクター効果との分解分析。
Warning
本記事は過去データの整理にすぎず、特定銘柄や投資手法を推奨するものではありません。
情報の正確性・完全性を保証せず、将来の株価動向を約束するものでもありません。投資は自己責任でお願いいたします。
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