S&P500が9日以上連続上昇すると景気後退が近い?

S&P500が9日以上連続上昇すると景気後退が近い?

目次

はじめに

みなさまゴールデンウィークはいかがお過ごしでしょうか。
4月初頭はトランプ関税によるショックがあり株が大幅に下落しました。私の保有していた銘柄も全面的にマイナスになり大打撃を受けました。 ただし、その後株価は急速に持ち直し、ゴールデンウィーク後半戦が始まる前になんとかマイナスの状況を抜け出すことができたためホッとしている次第です。

株価が回復し安らかな気持ちでX(旧Twitter)を見ていたところ、不穏なポストを見かけました。

S&P500 は直近9日間連続で上昇していますが、このような連続上昇は非常にレアケースであり、その80%は景気後退局面で起きる──という主張です。ブラックマンデー直前にも同じパターンがあったとのこと。 これでは安らかな休暇を過ごせません。本当にそうなのか検証してみました。


データ概要

  • S&P500
    • 終値 (1925年1月1日〜2025年5月2日)
  • 景気後退期データ
    • NBER(全米経済研究所)が公表している景気後退期間を利用

結果

まず、過去100年でS&P500が9日以上連続上昇したタイミングと景気後退期の関係を可視化します。薄い紫で縦に薄く塗られている部分が景気後退期です。

S&P500が9日連続で上昇したタイミングと景気後退期

過去100年間でS&P500が9日以上連続で上昇する事象は37回ありました。また、景気後退期は16回発生しており、その合計は16.8年でした。

グラフをざっと見る限り、連続上昇のタイミングが景気後退期に偏っているようには見えません。例えば、1950~60年代の景気拡大局面にも多数存在しています。

次に数字で確認します。連続上昇したケースを以下の表のように3つに分類して集計しました。 ただし、直近の2025年4月22日からの連続上昇については、今後どうなるかわからないため除外しています。

内訳件数割合
景気後退中8件22%
その後1年以内に景気後退突入10件28%
その他18件50%

9日以上連続でS&P500が上昇した事象のうち、50%は「景気後退中or1年以内に景気後退突入」に発生していることがわかりました。

過去100年のうち「景気後退中or1年以内に景気後退突入」に当てはまるのは33年(=33%)です。

したがって今回のデータだけで判断するのであれば、通常時よりも景気後退の可能性が若干高いと言えるかもしれません。 ただし、それでもその割合は50%で、元ツイートで言われているほど不安になる必要はないのかなと思いました。 そもそも、9日以上連続で上昇したかどうかの情報だけで、景気後退に入る可能性を議論するのは難しいようにも思いますが。

細かい数値を以下のアコーディオンの中に置いておくので、興味のある人はご参照ください。

連続上昇日数開始日終了日次の景気後退開始景気後退までの年月
91927-02-081927-02-18景気後退中-
101927-07-091927-07-20景気後退中-
91927-07-231927-08-02景気後退中-
91928-10-091928-10-191929-08-0110か月
111929-06-251929-07-081929-08-011か月
91929-08-101929-08-20景気後退中-
91936-10-011936-10-101937-05-017か月
101944-06-091944-06-201945-02-018か月
101948-05-061948-05-171948-11-016か月
91954-07-211954-08-021957-08-0136か月
121954-09-011954-09-171957-08-0135か月
91955-04-051955-04-181957-08-0128か月
121955-06-101955-06-271957-08-0126か月
101959-06-241959-07-081960-04-019か月
101960-05-261960-06-09景気後退中-
101961-01-171961-01-30景気後退中-
101961-07-191961-08-011969-12-01100か月
111963-12-241964-01-091969-12-0171か月
91964-06-241964-07-071969-12-0165か月
91967-04-131967-04-251969-12-0132か月
101968-11-041968-11-191969-12-0113か月
91970-08-141970-08-26景気後退中-
121970-11-191970-12-071973-11-0135か月
91971-01-141971-01-261973-11-0134か月
141971-03-261971-04-151973-11-0131か月
121972-07-281972-08-141973-11-0115か月
91973-07-161973-07-261973-11-014か月
91981-07-071981-07-17景気後退中-
111987-06-081987-06-221990-07-0137か月
101989-07-031989-07-171990-07-0112か月
101989-09-261989-10-091990-07-019か月
111990-04-301990-05-141990-07-012か月
91991-12-201992-01-032001-03-01110か月
121995-08-291995-09-142001-03-0166か月
91997-06-051997-06-172001-03-0145か月
92004-10-262004-11-052007-12-0137か月
92025-04-222025-05-02??


まとめ

  • 今回のデータだけで判断すると、景気後退の可能性が通常時よりも若干高いが、それでも50%程度。
  • 元ツイートで言われているような、9日以上連続で上昇する場合の80%が景気後退局面ということはなさそう。
  • そもそも9日以上連続で上昇したかどうかの情報だけで景気後退を議論できるだろうか。いやできない。

Warning

本記事は過去データの分析であり、特定銘柄や投資手法を推奨するものではありません。情報の正確性・完全性を保証せず、将来の株価動向を約束するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトおよび筆者はいかなる損失にも責任を負いかねます。

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