
S&P500が9日以上連続上昇すると景気後退が近い?
目次
はじめに
みなさまゴールデンウィークはいかがお過ごしでしょうか。
4月初頭はトランプ関税によるショックがあり株が大幅に下落しました。私の保有していた銘柄も全面的にマイナスになり大打撃を受けました。
ただし、その後株価は急速に持ち直し、ゴールデンウィーク後半戦が始まる前になんとかマイナスの状況を抜け出すことができたためホッとしている次第です。
株価が回復し安らかな気持ちでX(旧Twitter)を見ていたところ、不穏なポストを見かけました。
私たちはいま、めったに起こらない現象を目撃しています。過去100年間でS&P500が「9日連続で上昇」したのは、わずか0.25%─400回に1回(統計的には3シグマ級)のレアケースです。しかも、その80%は景気後退期に起きており、1987年10月の大暴落(ブラックマンデー)の直前にも同じパターンがありまし… https://t.co/56CVODl6wx
— ゆきママ (@yukimamax) May 3, 2025
S&P500 は直近9日間連続で上昇していますが、このような連続上昇は非常にレアケースであり、その80%は景気後退局面で起きる──という主張です。ブラックマンデー直前にも同じパターンがあったとのこと。 これでは安らかな休暇を過ごせません。本当にそうなのか検証してみました。
データ概要
- S&P500
- 終値 (1925年1月1日〜2025年5月2日)
- 景気後退期データ
- NBER(全米経済研究所)が公表している景気後退期間を利用
結果
まず、過去100年でS&P500が9日以上連続上昇したタイミングと景気後退期の関係を可視化します。薄い紫で縦に薄く塗られている部分が景気後退期です。
過去100年間でS&P500が9日以上連続で上昇する事象は37回ありました。また、景気後退期は16回発生しており、その合計は16.8年でした。
グラフをざっと見る限り、連続上昇のタイミングが景気後退期に偏っているようには見えません。例えば、1950~60年代の景気拡大局面にも多数存在しています。
次に数字で確認します。連続上昇したケースを以下の表のように3つに分類して集計しました。 ただし、直近の2025年4月22日からの連続上昇については、今後どうなるかわからないため除外しています。
内訳 | 件数 | 割合 |
---|---|---|
景気後退中 | 8件 | 22% |
その後1年以内に景気後退突入 | 10件 | 28% |
その他 | 18件 | 50% |
9日以上連続でS&P500が上昇した事象のうち、50%は「景気後退中or1年以内に景気後退突入」に発生していることがわかりました。
過去100年のうち「景気後退中or1年以内に景気後退突入」に当てはまるのは33年(=33%)です。
したがって今回のデータだけで判断するのであれば、通常時よりも景気後退の可能性が若干高いと言えるかもしれません。 ただし、それでもその割合は50%で、元ツイートで言われているほど不安になる必要はないのかなと思いました。 そもそも、9日以上連続で上昇したかどうかの情報だけで、景気後退に入る可能性を議論するのは難しいようにも思いますが。
細かい数値を以下のアコーディオンの中に置いておくので、興味のある人はご参照ください。
連続上昇日数 | 開始日 | 終了日 | 次の景気後退開始 | 景気後退までの年月 |
---|---|---|---|---|
9 | 1927-02-08 | 1927-02-18 | 景気後退中 | - |
10 | 1927-07-09 | 1927-07-20 | 景気後退中 | - |
9 | 1927-07-23 | 1927-08-02 | 景気後退中 | - |
9 | 1928-10-09 | 1928-10-19 | 1929-08-01 | 10か月 |
11 | 1929-06-25 | 1929-07-08 | 1929-08-01 | 1か月 |
9 | 1929-08-10 | 1929-08-20 | 景気後退中 | - |
9 | 1936-10-01 | 1936-10-10 | 1937-05-01 | 7か月 |
10 | 1944-06-09 | 1944-06-20 | 1945-02-01 | 8か月 |
10 | 1948-05-06 | 1948-05-17 | 1948-11-01 | 6か月 |
9 | 1954-07-21 | 1954-08-02 | 1957-08-01 | 36か月 |
12 | 1954-09-01 | 1954-09-17 | 1957-08-01 | 35か月 |
9 | 1955-04-05 | 1955-04-18 | 1957-08-01 | 28か月 |
12 | 1955-06-10 | 1955-06-27 | 1957-08-01 | 26か月 |
10 | 1959-06-24 | 1959-07-08 | 1960-04-01 | 9か月 |
10 | 1960-05-26 | 1960-06-09 | 景気後退中 | - |
10 | 1961-01-17 | 1961-01-30 | 景気後退中 | - |
10 | 1961-07-19 | 1961-08-01 | 1969-12-01 | 100か月 |
11 | 1963-12-24 | 1964-01-09 | 1969-12-01 | 71か月 |
9 | 1964-06-24 | 1964-07-07 | 1969-12-01 | 65か月 |
9 | 1967-04-13 | 1967-04-25 | 1969-12-01 | 32か月 |
10 | 1968-11-04 | 1968-11-19 | 1969-12-01 | 13か月 |
9 | 1970-08-14 | 1970-08-26 | 景気後退中 | - |
12 | 1970-11-19 | 1970-12-07 | 1973-11-01 | 35か月 |
9 | 1971-01-14 | 1971-01-26 | 1973-11-01 | 34か月 |
14 | 1971-03-26 | 1971-04-15 | 1973-11-01 | 31か月 |
12 | 1972-07-28 | 1972-08-14 | 1973-11-01 | 15か月 |
9 | 1973-07-16 | 1973-07-26 | 1973-11-01 | 4か月 |
9 | 1981-07-07 | 1981-07-17 | 景気後退中 | - |
11 | 1987-06-08 | 1987-06-22 | 1990-07-01 | 37か月 |
10 | 1989-07-03 | 1989-07-17 | 1990-07-01 | 12か月 |
10 | 1989-09-26 | 1989-10-09 | 1990-07-01 | 9か月 |
11 | 1990-04-30 | 1990-05-14 | 1990-07-01 | 2か月 |
9 | 1991-12-20 | 1992-01-03 | 2001-03-01 | 110か月 |
12 | 1995-08-29 | 1995-09-14 | 2001-03-01 | 66か月 |
9 | 1997-06-05 | 1997-06-17 | 2001-03-01 | 45か月 |
9 | 2004-10-26 | 2004-11-05 | 2007-12-01 | 37か月 |
9 | 2025-04-22 | 2025-05-02 | ? | ? |
まとめ
- 今回のデータだけで判断すると、景気後退の可能性が通常時よりも若干高いが、それでも50%程度。
- 元ツイートで言われているような、9日以上連続で上昇する場合の80%が景気後退局面ということはなさそう。
- そもそも9日以上連続で上昇したかどうかの情報だけで景気後退を議論できるだろうか。いやできない。
Warning
本記事は過去データの分析であり、特定銘柄や投資手法を推奨するものではありません。情報の正確性・完全性を保証せず、将来の株価動向を約束するものでもありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。当サイトおよび筆者はいかなる損失にも責任を負いかねます。