
配当落ちで株価はどの程度下落するのか
目次
はじめに
2025年3月28日、保有している銘柄の株価をチェックしたところ、多くが前日比でマイナスとなっており、思わずドキッとしました。調べてみると、この日は配当金の権利付き最終日の翌営業日であり、配当金を受け取る権利がなくなった影響で株価が下がったことが分かりました。
理論的には、配当金の権利が失われると、その金額分だけ株価が下がると考えられます。しかし、現実でもそのとおりになっているのでしょうか? 仮に株価の下落幅が予想配当金額よりも小さい場合、権利付き最終日の直前に高配当株を購入することで、大きなリターンが期待できることになります。逆に、配当金よりも大きく株価が下がるのであれば、高配当株は避けた方が賢明かもしれません。
今回は、2025年3月末のデータをもとに、配当金の予想額と配当落ちによる株価下落幅の関係を調査しました。
調査結果
予想期末配当利回り(株価に対する予想期末配当の割合)と、権利付き最終日前後の株価変化を集計した結果を以下に示します。
図を見ると、予想配当利回りが高いほど、株価の下落率が大きい傾向にあることが分かります。
このデータに直線を当てはめた結果、次のような関係式が得られました:
\[ y = -0.94 - 0.32x \]係数が \(-1\) に近いことから、ほぼ配当金の予想額と同程度だけ株価が下落していたことが分かります。
2025年3月末の配当落ちに関して集計を行いました。
- 対象は、TOPIX 500構成銘柄のうち、2025年3月末に決算を迎える380社です。
- ただし、同日に株式分割を実施した9社については、配当金の予想額が分割調整済みかどうか不明だったため、除外しています。
- 株価の下落率は、2025年3月27日(権利付き最終日)の終値と、翌28日の始値を比較して算出しました。
- 直線の当てはめは、二乗誤差最小化により実施。外れ値の除外などは行っていません。
まとめ
- 配当落ちによる株価の下落幅は、配当金の予想金額とほぼ一致していました。
今後調査したいこと
配当落ち後、株価は回復するのか?
今回の調査では、配当落ちによって株価が予想配当金額と同程度に下落することが分かりました。では、その後株価はどう推移するのでしょうか。
以下の図は、配当落ち後に考えられる株価推移のシナリオを示したものです。
図のように、次の権利確定日までに株価が回復する場合と、そのまま回復しない場合が考えられます。実際にはどちらのケースが多いのか、今後の調査対象としたいと考えています。
権利落ちしやすい銘柄に特徴はあるか?
今回の集計結果では、予想配当金と株価の下落幅が概ね直線関係にあることが分かりました。しかし、データにはばらつきがあり、直線から外れている銘柄も見受けられます。
このばらつきは、株価のランダムな動きに起因している可能性が高いですが、一部には以下のような要因もあるかもしれません:
- 高配当株として広く認知されており、配当目的の個人投資家比率が高い銘柄は、より大きく下落しやすい
- 政策保有や大口投資家の比率が高い銘柄は、配当落ちでも売られにくく、下落幅が小さい
これらの仮説も、今後の調査テーマとしたいと考えています。
Warning
本記事は、配当落ちによる株価変動に関する過去のデータ分析に基づいた情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や投資手法を推奨するものではありません。記事中の情報は信頼できると判断した公開データ等に基づいていますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
また、本記事に含まれる見解や予測は執筆時点のものであり、将来的な市場環境や株価の動向を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。
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